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カテゴリー>平和・基地 |08.11.02

ルポ 自衛隊航空総隊司令部が移転 変わる横田基地
      残土1日トラック140台 水源の地に土壌汚染の不安

 米軍横田基地で今年7月から、1日平均10㌧トラック140台もの建設残土の運び出しが続いています。在日米軍再編で合意した自衛隊の航空総隊司令部の移転にともなう工事によるものです。周辺の環境への影響や、土壌汚染の有無など住民に不安が広がるなかでも、国は工事の詳細や土壌汚染の検査結果を示していません。「安保のベール」の向こうで横田基地に何が起きているのか、現地を取材しました。  「また来たよ。トラックがずっと途切れないね」
 横田基地へと向かう道路(福生市)を歩くと、残土を積んで走るトラックと次々とすれ違います。学校や商店などが並び生活に密着した道路で、地元の住民も普段と異なる風景に、驚きの言葉をもらします。
 トラックが出てくる横田基地西側の第5ゲート前に立つと、信号が変わるたびにトラックが残土を積んで走り去っていきます。1日最大200台の運び出しがあると言われており、休憩時間を除けば数分に1台はトラックが出ていく計算です。
 東側にある第18ゲートにまわると、2階建てのプレハブが建った敷地に何台ものトラックが止まっていました。入り口には警備員が何人も立ち、近づく車に目を光らせ、ものものしい雰囲気を漂わせます。基地に入る前に、トラックはここで手続きを済ませ、残土を積みにゲートをくぐっていきます。

26万立方㍍も  運び出し

 残土の運び出しは今年7月末に始まり、来年の5月まで予定されています。これまでに延べトラック7000台分が運び出されており、1日平均は140台。最終的には26万立方㍍もの土を、青梅市内と日の出町内に運び込む見込みです。
 地元の福生市議会では、運び出しの計画が小学校や中学校などの通学路も通るものだったために、安全性や渋滞への影響などに懸念の声が出されました。
 しかし、おくとみ喜一議員(日本共産党)が、9月5日の本会議で「基地から残土を運び出すときや処分地受け入れ時に、土壌汚染や臭気などの環境チェックをしているのか」と質問したのに対しても、市側は「行っていると聞いている。詳細は国に確認中」とするなど、基地内の工事の情報は地元自治体も十分につかめていないことが浮き彫りになりました。

防衛省は独自調査せず

 横田基地から運び出される残土の搬出先の一つ、日の出町にある太平洋セメント株式会社の敷地には、ひっきりなしに10㌧トラックが入っていく姿が見られます。
 周辺には酒蔵も点在し、西多摩地域の水源となる場所。都心とは別世界のような緑と、川のせせらぎの響く静かな町が広がっています。太平洋セメントによると、横田基地から来るトラックは一日50~100台ほど。入口から車で5分ほど走った場所にある、縦横数100㍍の採石場跡地に、横田基地をはじめ、多摩地域の工事で出る残土を埋め立てています。
 太平洋セメントでは、土壌が安全かどうかの調査は、横田基地内で実施済みという前提で、「検査結果は送られてきており安全というデータが出ている」(同社)として、埋め立てする際には追加の検査はしていません。
 他方、横田基地内では燃料漏れ事故が過去に何度も起きており、油や化学物質による土壌汚染の有無に、周辺の住民には心配の声が広がっています。横田基地の敷地は、砂利の地層が多いとされ、燃料漏れ事故等で生じた汚染が地下水に乗って広がっている可能性もあります。

専門家「第三者のチェックを」

 横田基地内で実施している検査は、工事を請け負った大手ゼネコン大林組が試験機関に依頼したものです。 10月24日に日本共産党の笠井亮衆院議員が防衛省に説明を求めたところ、国もこの検査結果をうのみにするだけで、独自の調査はやっていないことが分かりました。
 聞き取りに参加した地元の住民らは、「国も独自に土壌汚染を調査して、業者の検査とクロスチェックするなど、当たり前のことがされていない」「横田基地のなかはベールに包まれていて、国がいくら安全と言っても何が行われているのか周辺住民には見えない」と語り、少なくとも現在の検査結果を公表すべきだと迫りました。
 元通産省主任研究官で、土壌汚染問題の専門家である坂巻幸雄氏は、基地内の検査ではサンプルの取り方などで恣意的な検査がされても妥当性をチェックできないとして、「本当に『安全』をいいたいのであれば、工事担当者による資料採取だけではなく、住民も納得する公正な第三者機関による現地チェックとサンプリングが必要」と指摘します。

安保のベールのなか 日米の軍事拠点に

 横田基地をめぐって、日本共産党の笠井亮衆院議員が10月24日に防衛省に対して行った聞き取りには、星あつまろ衆院東京21区予定候補、鈴木おさむ25区予定候補、田村智子党都委員会副委員長、尾崎あや子北多摩1区都議候補、地元の「横田基地問題を考える会」、「横田基地撤去を求める西多摩の会」などの関係者が参加しました。
 残土問題では笠井議員が防衛省に、「どんな土壌汚染調査をしているのかも分からないのでは、住民は安心できない」と検査結果を公表すべきだと求めても、防衛省側は「公表は考えていない」と繰り返すばかりでした。
 自衛隊航空総隊司令部の移転にともなって横田基地に建設される総司令部の建物は、地上3階、地下2階となる予定で、工事費は07年度143億円、08年度136億円、09年度の概算要求214億円にのぼります。
 防衛省は建物の具体的な姿は非公開としていますが、26万立方㍍という残土の量からは、数10㍍の深さを持つ地下要塞のような建物になると推定されます。
自衛隊の航空総隊司令部移転は、米軍再編の一環として合意されたものです。米軍再編では横田基地内に、日米双方の情報の共有や調整を進める「日米共同統合運用調整所」を設置することも合意されています。
 日米共同統合運用調整所についても防衛省は、笠井議員の聞き取りに対して、業務内容や機能などを具体的には示しませんでした。
 東京平和委員会の近森拡充氏は、「日米共同統合運用調整所は24時間態勢で最大150人が12時間交代で勤務するとされている。航空自衛隊がレーダーなどで集めている防空情報を、米軍に24時間提供する仕組みも開始されており、自衛隊と米軍の関係は一気に密接になっている」と話します。
 自衛隊側でも、ミサイル防衛の際には、航空総隊司令官が海上自衛隊のイージス艦の部隊も含めた指揮を統一的に取ることが決まっています。日本側のミサイル防衛関係の情報が、横田基地内の日米共同統合運用調整所に集められることと合わせて、同基地はミサイル防衛を中心とした日米の軍事一体化の拠点の一つになろうとしています。