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難病とたたかいCDデビュー 寺本明子さん

「一人じゃないよ」歌声で”生きる”にエール 町田市・主婦

情感豊かに歌う寺本明子さん

 難病で大腸を全摘出し、精神の病を抱えながらも念願のCDデビューを果たした女性がいます。主婦の寺本明子さん(38)=町田市=です。タイトルは「一人じゃないよ」。毎年3万人の自殺者がいることに心を痛め、「同じ苦しみを持つ自分だからこそ歌える曲がある」と歌声で、生きることにエールを送ります。

 ピアノの生演奏をバックに、ロングヘアーを左右に揺らしながら情感豊かに歌う寺本さん。ライブハウス「MANDA―LA(マンダラ)2」(武蔵野市)に、その姿はありました。ところがその直前まで、体を丸めテーブルの片隅でじっとしていたのです。

鎮痛剤打ちライブ

 実は数日前、下血し、ほとんど何も食べられずにライブ当日を迎えていました。「腹痛で立っていられなかった」というほどでしたが、足首に鎮痛剤の注入針を刺したまま、予定の9曲を歌いきりました。
 なぜ、そこまでしてステージに立つのか―。その理由は、彼女が歌う詞で分かります。

 人生にルールなんてない/自分らしさを探すため/誰も死にたくなるときもある/でも生きているんだよ/あなたは一人じゃないよ/だけど辛いんだよね/わかっているよ/あなたは一人じゃないよ

 CDのタイトルともなった、明子さんが作詞した「一人じゃないよ」というオリジナル曲の一節です。
 「毎年3万人も自殺していると知り、衝撃でした」という明子さん。実は自分自身、うつ病の治療中で「死にたくなることがある」と明かします。本人が難病で息子は重度障害というファンの女性が、夫に先立たれた時にこぼした「消えてなくなりたい」という言葉は今も忘れられません。
 「難病にならなかったら精神も病むことはなかったと思う。気持ちをコントロールできない苦しさ、もどかしさは当人じゃないと分からない」。そう感じた明子さんは「闘病生活をおくる自分にしか書けない詞がある。それを歌い続けよう」と心に決めました。
 そんな時、生まれたのが「一人じゃないよ」でした。「私には支えてくれる夫や両親がいるように、誰にでもあなたのことを思ってくれる人がいることを伝えたかった」と、詞に込めた思いを語ります。作曲は人気バンド「乙三」(おっさん)のリーダー、大竹創作さん(36)。かつてのバンド仲間で、音楽活動から遠ざかっていた明子さんの復帰の力にもなりました。
 歌の指導者でボイストレーナーの伊藤美子さん(52)は「この歌は、あなたそのもの。あなたが透けて見えますよ」と言い、予定になかったこの曲をデビューCDに急きょ収録させ、タイトルも同名に決定。伊藤さんが手がける「MARUYO」レーベルの第一号となりました。

難病発症は20歳

 明子さんの病名は「潰瘍性大腸炎」。国内の患者数は約10万人とされ、原因は明確になっていません。
 発症は20歳の頃でしたが、病状が激変したのは保育士をしながらバンド活動をしていた2002年、28歳の時。まだ軽症だったため、女性ボーカルを中心とした人気バンド「才」に加わり、メジャーデビューを目指しました(才はその後解散)。仕事と労働組合、さらにバンド活動と、寝る間も惜しんで、すべてに全力でした。そんなある日、大量の下血と高熱で倒れ、救急車の人となったのです。
 「劇症型の潰瘍性大腸炎でした。何が起きてもおかしくない、まれに見る症状でした」。こう振り返るのは、夫の忠さん(48)。明子さんが搬送された病院で、治療に当たったのが外科医の忠さんでした。
 これまで6回手術し、入院回数は数え切れないほど。大腸はすべて摘出し、現在は人工肛門を装着。腹痛は消えず、漏れや臭いの心配など人工肛門の扱いには常に気を遣います。

夫は熱烈ファン

 明子さんは忠さんのことを「恋人であり同志、そしてコンビ」といいます。詞ができたら、まず忠さんに評価してもらいます。「詞に難しい言葉、英語は使わない」ことも2人で決めました。
 「天真爛漫、優しい、ずるくない、そばにいて安心」。忠さんが明子さんの好きなところです。主治医でもありますが、ライブ会場では明子さんの肩をもんであげるほどの愛妻家。交際は明子さんが救急搬送された後、入院するたびに病室に足繁く通ったことで始まります。高校時代にバンド経験もある忠さんは、明子さんのライブを見て、いっぺんにファンになったといいます。明子さんも発熱を隠してまでデートの誘いに応じるほどでした。結婚して10年たつ今も「ラブラブです」(明子さん)。
 忠さんは「病気はつらいし頑張っているのは、そばにいるのでよく分かります。大ヒットしなくてもいい、老若男女の心にいつまでも残る詞を作ってほしい」。熱烈なファンでもある、夫からのエールです。

 てらもと・あきこ 1973年、多摩市生まれ。短大卒業後、独学で資格を取得し、保育士に。「ルナ&ルーシー」「才」などの音楽バンドでボーカルを担当。20歳で潰瘍性大腸炎を発症し、26歳から大量下血を繰り返し、3年間に何度も入院、徐々に重症化。2010年までに手術を6回、大腸を全摘出。8年間のブランク後、12年2月CDデビュー

CD「一人じゃないよ」

◆CD「一人じゃないよ」 1500円(税込み)収録曲=一人じゃないよ、一本道、ひまわり、みんなで歌おう(全曲寺本明子作詞)発売元・まるよエンターテインメント 電話03-3589-5601 ファクス03-3568-7388
◆寺本明子ワンマンライブ
9月1日(土)午後0時半 「MANDA―LA(マンダラ)2」(吉祥寺駅南口下車徒歩2分、0422-42-1579)。料金2000円とドリンク代

 

(東京民報2012年6月3日号に掲載)

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