本文へスキップ

東京民報は東京が見える、東京を変える新聞です。

しぶとく生きる東京タヌキ

23区には1千頭!? 目撃情報は3年間で459件も
練馬、杉並、板橋3区が突出

 今年2月、本紙の写真投稿欄「パシャ」に「ひなたぼっこするタヌキの親子」が掲載されました。昨年11月には千代田区大手町のビジネス街に現れたタヌキが警察に保護されました。「皇居から放浪してきたのではないか」などと、時々話題になるタヌキ。人口過密の東京でどんな暮らしをしているのか、調べてみました。(松橋隆司)

 本紙に写真を投稿してくれたのは、ながい・ともこさん(44)。現在、北区で区議会選挙をたたかっている日本共産党の候補者です。後援会員を訪ねて行く途中、お寺の境内の一角でタヌキの親子5匹を目撃。シャッターを夢中で押し、撮影に成功しました。ながいさんは、人物写真を長年撮り続けており、カメラを手放さず持ち歩いているのが功を奏しました。
 タヌキの目撃情報を集めている「東京タヌキ探検隊」の主催者・宮本拓海さん(43)は、写真のタヌキについて、「毛が抜けているから、疥癬(かいせん)症にかっているようだ」といいます。
 疥癬症はヒゼンダニ類が寄生することで発症します。宮本さんによると、タヌキは夜行性とはいえ、毛が抜けると寒いのでひなたぼっこするする姿など、日中に行動するタヌキが目撃されています。
 ながいさんの目撃現場はビル3階ほどの高さの小さな百平方・くらいの丘。片側の斜面は墓が並び、他の斜面には樹木が茂っています。「タヌキが生息するには一定の緑地が必要」という条件は満たしているようです。


「溜め糞」調査 皇居の結果は


 皇居にいるタヌキについては、2006年4月から翌年12月まで1年9ヶ月にわたって「溜め糞」調査が行われています。タヌキは特定の場所で排便する習性があり、そのような場所が「溜め糞」です。調査は、糞を分析することで、タヌキの生息状況をつかもうと宮内庁・国立科学博物館の調査チームが実施したもの。天皇も名を連ねた論文が発表されています。
 では、皇居内にどれほどのタヌキが生息しているのでしょうか。
 調査チームは、皇居内で30カ所の溜め糞場があり、それらの多くが継続的に使用されていることを確認しています。1頭のタヌキが1日に出す糞の数は平均1・9個と推定した調査報告(1979年)に基づくと、皇居内には、最小で2頭、最大で14・5頭と推定しています。

どんなものを食べているか


ながいともこさんが撮影したタヌキの親子 
 調査チームは、全調査期間中で169個の新しい糞を分析しています。
 タヌキは雑食性ですが、都市部から離れたところで生息している“田舎タヌキ”と都会で生活している“都会タヌキ”では食べ物に違いがあることがわかっています。
 都市部から離れた長崎県高島や神奈川県丹沢札掛の糞の分析調査では、昆虫類と果実類を中心にムカデ類、甲殻類、魚類、爬虫類、鳥類、哺乳類などを食べています。都市部の神奈川県川崎市や埼玉県伊奈町での胃内容物や糞の分析によると、残飯など人為的な食物の出現率が高く、72%、85%でした。
 皇居のタヌキは、昆虫類や果実を主食に、ハトなどの鳥類やモグラなども食べており、田舎タヌキの食性に似ていました。皇居には比較的動きが緩慢なオサムシ類が広範囲に生息しており、タヌキが捕食しやすい餌になっているといいます。糞から鳥類の毛が出てくるのは、皇居に生息しているオオタカなどの猛禽類が捕食した死骸を食べているとみています。
 国立科学博物館が1996年から5年間かけて実施した生物調査によると、皇居内には3638種の動物が生息し、1366種の植物がみられ、都心のなかできわめて多様な自然環境が残されています。調査チームは、「皇居は巨樹を交えた常緑広葉樹と落葉広葉樹の豊かな混交林に覆われ、タヌキの生息環境としても良好な条件が備わっていると思われる」と論文を結んでいます。皇居は安全で餌も豊富なタヌキの聖域になっていることがわかります。

23区内生息数を推定すると




 23区内にはどのくらいのタヌキが生息しているのでしょうか。
 1950年代初頭まで、都心部でもタヌキの捕獲例があります。その後は、都市化の波に追われ、都心部では目撃記録もなくなりました。宮本さんは、タヌキが区部でゼロになったのではなく、大きな公園では、しぶとく生き残っていたのではないかと推測しています。1980年代から都市周辺で目撃情報が増え始め、都心部では1990年代前半から赤坂御用地や新宿御苑で目撃されるようになってきました。
 宮本さんは今年1月、23区内のタヌキ、ハクビシン、アライグマの目撃情報を集計しました(表参照)。
 2008年から2010年の3年間でタヌキの目撃例は459件、ハクビシン344件、アライグマ27件でした。宮本さんは、「2010年はタヌキよりもハクビシンの方が多かったのが特徴的だった」といい、ハクビシンの目撃情報の多さにも注目しています。
 目撃件数は、練馬区、杉並区、板橋区が突出して多く、3区だけで半分近い約48%を占めています。
 宮本さんは、目撃情報を地図に落として検討し、23区内のタヌキの生息数を推定しました。タヌキが安全に繁殖できる緑地=拠点がどのくらいあるかを数えたところ、約150カ所ありました。拠点の周辺地域にいるタヌキは、1カ所で6─12頭生息しているとみられることから、23区全体で600─1800頭と推定。宮本さんは、「およそ1000頭以上のタヌキがいる」と考えています。

緑地の確保緊急課題に

 タヌキの生息環境ついて宮本さんは、「タヌキたちに必要なことは現状の緑地を維持することです。これは未来の話ではなく待ったなしの緊急課題」と訴えます。「公園や寺や神社のように永続性の期待できる緑地は、あまり心配ありません。しかし、個人私有地の屋敷林や企業所有の工場や運動場は、いつ消えてなくなるかわかりません。タヌキの立場からは、いまある緑地を死守することが最も重要なことなのです」。

 (東京民報2011年4月24日号に掲載)

バナースペース



心つなげよう!! 

東京タワーから光のメッセージ